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アニータ・エルバース『ブロックバスター戦略』


商品ラインに均等にリソース分配し、利益を増やそうとして コスト削減に努めるよりも、ブロックバスターを狙って大きくつぎ込み、その他大勢につぎ込む費用を大幅に少なくすることが、ショービジネスの世界で常に成功を収める確実な方法なのである(p.5f)
ハーバードビジネススクールのメディア産業の経営戦略・マーケティング担当の教授による本。日本語版ではサンリオの取締役を務める人物が各章のまとめやコラムを書いている。ハーバードビジネススクールで使われるビジネスケースを元にして書いており、とても読みやすい本。取り扱われてる業界には、映画、音楽、出版、スポーツ。いわゆるショービジネスの世界。

本書でメディア産業で有効な戦略として掲げられているのが、タイトルにもなっているブロックバスター戦略。ブロックバスターとは映画産業でよく言われるメガヒット作のこと。著者の主張では、メディア産業では小さな投資を繰り返すのではなく、可能性のあるものに大きな投資をしてブロックバスターを見出すのが有効な戦略だ(p.25)。

ブロックバスターのようなメガヒット作を狙って大きな大きな投資をするのは、一見リスクが大きいように見える。しかし少額を数多くの対象にかけるほうが、実ははるかに大きなリスクを負うことになる(p.37)。なぜなら例えばワーナー・ブラザーズを例とした映画業界では、ブロックバスター戦略を避けていると、コンテンツ制作者、監督、役者などクリエイティブな仕事をしている人達から相手にされなくなってしまう。映画館などメディア流通市場での力も失ってしまう(p.49-58)。

ブロックバスター戦略がエンターテインメント業界で有効なのにはいくつかの理由がある。 例えば 商品の再生産や流通にかかるコストが少ないので、 大量に流通するほどコストは下がる(p.60)。また、「グローバル化が進行し、競争が激化する市場において、流行り廃りのサイクルがかつてないほど早まっている時代にあって、騒然とした膨大なメディアを通り抜けて大衆のもとに達するには、莫大な予算が必要になる」(p.266)。またエンターテインメント商品は事前にサービスを体験できないため、人々の間での評判や口コミが大きな力を持つ。すなわち社会的影響力が大衆文化の普及では強い力を持っている(p.98-102)。

こうして多額の資金を投入できるものが勝つ市場、つまり一人勝ち(winner-take-all)の市場がエンターテインメント業界だ。例えばスポーツ業界では一人の力あるプレイヤーがチームの評価の鍵を握る。こうしたプレイヤーは、チーム・製品のアイコンとして客寄せになる。そもそも消費者は目立つ人物以外の多くの人物を覚えていない。さらに、失敗したときに夢選手はいなかったからだという批判を回避する保険となってくれる(p.127-131)。

もしブロックバスター戦略が有効なら、少額の投資を他の商品にする必要はないのではないか。こうした商品はそもそもほとんど利益にも貢献していない。しかし少額の投資にも意味がある。それは冒険的な投資に対するテストケースとして使える。扱う商品が多いことにより、発注先や流通関係を維持できる。 多くの商品で固定費やインフラ費用を分担することによりコストを下げることができる(p.62-67)。

覇者の章ではブロックバスター戦略はエンターテインメント業界に限られない。共通の商品しか作らないアップルの小品種主義はまさにそうした例と言える。また下着の市場におけるヴィクトリアズ・シークレットもブロックバスター戦略の例として挙げられている (p.298-301)。

巨額の投資を必要とするブロックバスター戦略は一企業には荷が重すぎる。そこで、スーパースターを複数企業で利用してブロックバスターを作り出すアイデアが述べられている。ジェイZの自伝本における出版社とマイクロソフトの協調や、レディ・ガガを巡る複数企業の連携などが実例として挙げられる(p.251-267)。

容易に分かることだが、ブロックバスター戦略はいわゆるロングテールという考えに異議を唱えるものだ。著者はデータを示しながら、ロングテールが実際には成立していないことを示そうとしている。例えば iTunes の音楽配信において成立していない。テールの大多数の商品は、そもそもあまり売れなかったものでしかない。他の分野でも、エンターテイメント業界は逆に、以前にも増して一人勝ちの様相を呈している(p.219-224)。さらに、YouTubeと比較したときのHuluの成功は、インターネット上でもブロックバスター戦略が有効なことを示している(p.232-237, 244-246)。

ちなみに途中には話の筋が脇にそれているように感じる。ボカ・ジュニアーズなどの人材開発モデル(p.143-157)はどのような意味でブロックバスター戦略なのだろう。スポーツ業界におけるブロックバスター戦略としては、レアル・マドリードの話が長い。ところが評価されているのはマンチェスターユナイテッドのファーガソン監督だ。アンバランスな記述に見える(p.163-167)。さらに言えば、製品ライフサイクルやブランドマネジメントの考えを取り入れて、スーパースターの売り方を述べている第四章は、ブロックバスター戦略とは離れた話題に見える。

ロングテールは売上高が小さい商品でも、それぞれの買い手がいるという話であり、これは消費者視点の話。ところがブロックバスター戦略は完全に生産者側の理論であり、売上高ではなくて投下する資本の話。本書がロングテールを批判する時にはこのずれが気になる。また、投下資本量に利益がついてくるような印象を持ってしまった。リスク管理の話が少ないと感じる。
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