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新清士『VRビジネスの衝撃』


VRの現状について書かれた一冊。簡単な歴史、現状の使われ方、アメリカや日本の状況、これからの展開について簡潔に書かれている。内容としてはオキュラスのヘッドマウントディスプレイによるVRゲームの話がメイン。それはVRの現状がそういうものだということだろう。

VR(Virtual Reality)という言葉自体は1989年にジャロン・ラニアーという人が言い出したものだそうだ。この後、1990年台は一回目のVRブームになる。昨年2016年がVR元年と言われる今回は、二回目のブームだ(p.19-21)。ただし、2006年に始まったセカンドライフもVRブームとしているので、それを入れると三回目だろう。昔のブームと今回の大きな違いは、ヘッドマウントディスプレイによる圧倒的な没入感と、プラットフォームだという。ヘッドマウントディスプレイというデバイスができて、それをプラットフォームとして様々なものが対応し始めているのが、過去には無い点(p.72-75)。

現在の形のヘッドマウントディスプレイは、何と言ってもオキュラスが作り出したもの。オキュラスについては、創業者の天才ハッカーであるパルマー・ラッキーの創業ストーリーがやや詳しく扱われている。パルマーだけではなく、ゲーム界の伝説的プログラマーであるジョン・カーマックがオキュラスに関わることで大きく進展していく(p.95-99)。また、マイケル・アブラッシュという、多少思想的な天才プログラマーもオキュラスの鍵となっている(p.108-119)。

こうしたオキュラスのヘッドマウントディスプレイに、ユニティなどのゲームエンジンが対応し、3DCG生成(モデリング、レンダリング、物理エンジン)を容易にすることによってVRゲームが進展する(p.63-65)。ゲーム以外では、CADソフトがVR映像の出力に対応したことにより、建築物内をバーチャルに見る建築VRがビジネス化してきている(p.156-162)。

オキュラス以外でもHTCバイブ、プレイステーションVR、そして日本のヘッドマウントディスプレイのベンチャーFOVE(p.164-170)が取り上げられる。とはいえ、話のほとんどはオキュラスについてだ。

著者が引くところ、VRの衝撃の本質は「機械と人間とのやり取りの在り方を変えるユーザーインターフェイス革命」(p.199)だ。ヘッドマウントディスプレイそのものが目的ではない。むしろ、ヘッドマウントディスプレイはVR実現のための過渡期のデバイスにすぎない(p.34-36)。VRの向かう先はMR(Mixed Reality、複合現実)だという。MRとは現実と区別がつかないほどのCGを現実に重ねるもの、とされるが、AR(Augmented Reality)と何が違うのかあまり判然としない。VRからMRへの展開の箇所はやや急ぎすぎた記述(p.196-205)。

VR、とくにVirtualを「仮想」と訳すのは、日本IBMが1965年に犯した完全なる誤訳である(p.21-23)。本書はこの点が明記されていて好ましい。VRを仮想現実とみなしてしまうことが、日本と欧米のVRに対する差を生んでいるという指摘は面白い。日本でのVRアプリは、仮想的なキャラクター(初音ミクとか)とのコミュニケーションを実現させるものが主流。欧米でのVRアプリが目指しているのは、他のユーザーと同時にVR空間を体験するソーシャルVRだ(p.140-150, 169f.)。VRが普及して誰もが気軽に体験できるようになったとき、ビジネスの付加価値として残るのは他人との体験共有、ソーシャルVRの方だと著者は記す(p.185f)。

それにしてもvirtualを「仮想」と訳してはならない。ではどう訳すかは今ではどうにもならない気もする。本書はこの誤訳から逃れているが、virtualの意味について分かりやすい話を書いておく。タラバガニは「カニ」という文字が入っており、英語でもRed King Crabというのだがカニ(Crab)ではなく、ヤドカリの仲間だ。けれども見た目、漁法、流通上の扱い、料理法、食味に至るまでカニとほぼ同じ。日常生活のレベルではカニとして扱って問題ない。したがってタラバガニは実体は(=そのものの実体が何であるかを定義する生物学によれば)カニではないが、virtualにはカニなのである。このとき、タラバガニが「仮想的な」カニであるわけではない。それは実在するものだ。同様に、マーガリンはvirtualなバターだし、カペリンはvirtualなシシャモだし、カニカマはvirtualなカニの蒲鉾であろう。
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