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大泉陽一『未知の国スペイン』


スペインの中でも独自の文化をもつ、バスク、カタルーニャ、ガリシアについて。歴史や教会文化、食文化などが簡潔に記されている。著者はスペイン在住の経済系の研究者だが、本書はもともとその父親の記した本の改訂だそうだ。

バスクについては、その過激な独立運動もあって単書がいくつか見られる。カタルーニャは人気都市のバルセロナを含んでいるため、数多くの本がある。ガリシアはかなりマイナーな方。サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼についての本が多いくらいか。これらの地域についてまとまって記しているのは類を見ない。記述の分量はバスク:カタルーニャ:ガリシアで5:3:2くらい。バスクが多い。

バスク地方の記述は、著者が一番馴染みがあることもあってよくできている。バスク地方にはもともと、アウトリゴネス、カステリィオス、バルドゥロス、バスコニアという4つの部族がいた。バスク民族だけが他の三部族と違ってローマに抵抗しなかったため、ローマ人とバスク人の友好関係が維持された。他の部族は滅ぼされた。かくしてバスク人は独自の非ローマ的伝統的社会や文化を保持することができた(p.7-9)。8世紀には南からウマイヤ朝、北からはフランク王国カール大帝がバスクに攻め入る。この狭間でバスクの人々は、バスコニア人としてのアイデンティティを維持しようとする。かくしてバスクは9世紀にはパンプローナ王国を確立し、10世紀にはそれが分裂してナバラ王国となる(p.14-15)。16世紀にはアラゴン王フェルナンド5世に征服され、カスティーリャ・アラゴン連合王国に組み入れられる。

バスク地方は1833年第一次カルリスタ戦争の敗北により、1876年スペインの一地域として組み入れられる。国民国家の形成の時期、バスクがアイデンティティを再び模索し始める。サビノが始めるバスク民族主義はこの後、1893年に宣言される(p.18-25)。1931年にスペインで第二共和政が成立し、バスクに自治の機運が高まる。1936年には、アギレを大統領としてバスク自治政府が成立する。ただ、フランコ反乱軍と共和国政府軍の戦いでは共和国側についたため、これがかのゲルニカの空爆につながる。フランコの勝利によりバスク地方は自治権を剥奪され、弾圧の時代へ入る(p.30-37)。フランコ退陣のあと、1979年になってようやく自治政府が復活。ただし国家はあくまでスペイン一つであり、バスク人はスペイン人との位置づけが続いている(p.42-44)。

世界で活躍したバスク人として、まず大航海時代の探検家が書かれる。フィリピンを征服したレガスピ司令官、太平洋航路を発見したウルダネータ、はじめて世界を一周したエルカノ。また、バスク人は世界最古の捕鯨歴史をもつそうだ。セミクジラの漁を近海のビスケー湾で行っていた。鯨を追ってコロンブスのアメリカ到達より100年早くカナダの東北海岸に到達したりもしている(p.56-60)。バスクといえばイグナチオ・デ・ロヨラが創始したイエズス会。フランシスコ・ザビエルの話もある。また、バスクの伝統的スポーツや祭りについて記されているのも特徴的。

カタルーニャの歴史はだいぶ簡潔な印象。カタルーニャも自治を求めてフランコと戦った。ゆえにフランコ政権で弾圧に合う。1977年には、スペインで最初に自治の復活を成し遂げる(p.119-121)。カタルーニャの記述はモンセラット山のベネディクト会修道院の話が多い。天正少年使節がモンセラット山に立ち寄っており、その話も扱われる。文化面は何と言ってもガウディの建築。カタルーニャ地方にあるガウディの設計した建築物が紹介される。

ガリシアの歴史は古代ケルト民族が扱われる程度。記述の大半は、聖都サンティアゴ・デ・コンポステーラの広場や教会建築についてだ。作付面積も少なく都市部の産業を発展させて吸収することもできないガルシアの農民は貧しかった。アンダルシアとは農業の規模がまったく違う。そのため、18世紀には中南米への移住が始まる。1960年代には特に旧西ドイツに職工移民としての出稼ぎが急増した(p.185-188)。

最後にはフランコ政権時代の愛国的歴史教育について書かれている。その教育が残したスペイン至上主義はいまだに影響が大きく、若者には英語の学習意欲が低いなど、外国への興味が薄い現状を生んでいるとのこと(p.205-207)。
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