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ウォルター・ホワイトヒル『ボストン市立図書館100年史』


ボストン市立図書館の設立から100年間を追ったもの。1956年刊。歴代の館長を時代区分としている。図書館の成立から始まり、移転や分館の建築、図書購入予算や職員の給料の問題、図書館の実情を知らない長による運営の混乱など。資料は口頭を含めて丹念に辿られている。訳者は引用の原典に細かくあたり多くの注を付けている。かなりの力量。

話はフランス人のアレクサンダー・ヴァテマールの図書館への情熱と蔵書の寄付から始まる。彼は1841年ボストンに来訪。しかし市立図書館設立については実質的には貢献していない。とはいえ、その後のボストン人の心を動かした(p.4-18)。謎なのはこの人は腹話術師だということ。なぜ異国の腹話術師がボストンの図書館の設立に情熱を燃やしたのかは、記述からではよく分からない。

ヴァテマールの情熱を受けて、1852年には公立図書館設立の理事会がジョージ・ティクナーらで発足する。エドワード・エヴァレットの寄付がこの図書館設立に大きく寄与している。そして1854年にボストン市立図書館はメイソン街に設立される(p.20-28)。さらに寄与した人物は、マサチューセッツ生まれでロンドンに住んでいたジョシュア・ベイツ。彼は巨額の寄付を行い、その運用利益(利息)が図書購入に使われた。ベイツの寄付は図書館の設立を決定づけた(p.72)。このおかげでボストン市立図書館は、議会図書館に次ぐ全米2位の蔵書数となる。これは大学図書館も超える規模(p.38-43)。図書館設立にあたって、運営組織や日常業務の細かな事務規定などを整えたのはジョージ・ティクナーだった。1856-57年には、ヨーロッパに図書購入旅行に自費で出かけている(p.53-56)。

こうした設立期の有能なメンバーがやがて世を去ると、図書館は停滞の時代に。1877年には十分な知識もない市議会が図書館予算の細かな使い方に干渉し、混乱を生んだ。これに嫌気が差したジャスティン・ウィンザー館長が辞職して、ハーバード大学の図書館長になってしまう。これ以降、ボストン市立図書館は1895年のハーバード・パトナムの館長就任まで荒野をさまよい、脱出に18年を要した(p.114-120)。

中興の祖としてパトナム館長は高く評価されている。そのごく短い就任期間(1895-1899)で彼は、図書館を人々にとって役立つように変えた(p.200-202)。このようにボストン市立図書館は館長個人による独裁と、理事会による細かいチェックという官僚的な正確さという奇妙な混合に苦しんできた(p.246-248)。特に、ボストン市立図書館は市民(だけでなく文字通り誰にでも)開かれた図書館であると同時に、学術参考図書館として稀覯本も多く収蔵し、大きな役割を担っている(p.275-277)。そのバランスを(主に予算と収蔵スペースの問題で)どう取るかは、ずっと課題になっている。
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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。
しかし博士号は取らずPh.D. Candidateで進路変更。
哲学と特に関係なくIT業界に住んでいる。

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