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福原正大、徳岡晃一郎『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』


日本の人事の問題がどこにあり、それが機械学習を用いたソリューションでどう変わるのかについて。それなりに問題点はまとまっている。またHRtechの事例にとしてはいくつか拾うことができる。人事領域は定性的なデータが多く、また人の評価に関わることから秘匿性が高かったりもする。なかなかデータに基づく判断は難しい。だからこそ出来たときのインパクトは大きい。著者も書くように「もとより人と組織の問題は科学やデータですべてをとらえきることのできない複雑なものであり、それらを扱う人事は一番最後に残された暗黒大陸のようにも思われている」(p.128)。もちろんこれは、そう思われているだけだ。

日本の人事の問題点は、主に4つにまとめられている(p.73-89, 147-150)。人事制度の整備がメインの仕事になっており、個別の従業員の能力や事情を把握できてない。集団主義的思考をしており、社員を平均的に見ていて個人の多様性に対応できていない。人事そのものも、現場でも人事評価などは暗黙知に頼っている。短期的な成果が追い求めれ、表面的な数値ばかりがKPIとして設定され、優先されている。

機械学習などでこれら課題にどう対応できるのかは、さほど具体的な話はなく、私にはあまり参考にならなかった。解決策がいまあるわけではなく、できるようになるはずだ、という将来像の提示が主。いくつか面白そうな企業の紹介はある。質問への回答ではなく、ゲームにおける行動で個人の能力を測るニューヨークのPymetrics(p.17-21)。公開されているレジュメを自然言語処理して、人材のレジュメに対してどのようなキャリアを選択すべきかを算出し、詳細な職種とのマッチング度をスコア化するサンフランシスコのPredikt(p.100-103)。オンラインゲームでクリエイティビティやイノベーション力を測るサンフランシスコのSparcIt(p.110-112)。クリティカル・シンキング力とコミュニケーション力をオンラインでテストし、自然言語処理で自動採点するニューヨークのCAE(p.112-115)。

著者自身は大学生を対象とした、グローバル人材の能力をスマートフォンで評価し、企業とマッチングするGROWというサービスを展開している。50ページ弱はその宣伝に当てられている。単なる自己評価でなく、他者からの評価も入る点が特徴だという(p.154)。GROWは人材のコンピテンシーだけでなく、気質や価値観を評価する。認知神経科学や行動遺伝学を踏まえているそうだ(p.159-163)。『マネー・ボール』の世界を目指しているとのこと。察するに機械学習はあまり鍵になっていないように見える。

現時点での機械学習から導かれる答えは参考意見であって、最終的に判断を下すのは人間。経営者や会社が持つ価値観、哲学が重要になるという点についてはその通り(p.67-70)。というより、機械学習のモデル構築に際してまさにこうした価値観や哲学が必要になるはずだ。特徴量の設計やモデル精度の評価において。

ちなみに、著者は戦略コンサルタント系の人なので、機械学習についての理解はそれなり。なぜか計算まで含めてベイズ統計を紹介するあたり(p.56-64)はほぼ趣味なのだろう。理解の程度は例えば次の文を見ると分かる。
ディープラーニングもまた、コンピュータープログラムであることに変わりはないのだが、自らプログラムを作成したり進化させたりすることができる、という点が画期的なのだ。(p.44)
ディープラーニングはプログラムではないし、プログラムを自ら作成したりしない(まさかpix2codeとかでなければ)。
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