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バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』


とても有名な本。株価の動きはランダム・ウォークみたいなもの。それを何とか分析して方向を読み、利益を上げようとするのは愚かな行為。チャート分析、ファンダメンタル分析、スマートベータなど株価分析の手法をそれぞれ批判。結局は低コストで税法上最も有利な、時価総額加重の市場インデックス・ファンドを運用の中心に据えるべきだ(p.361f)という結論に至る。

確かに株価分析の無効性にはそれなりに納得するものの、自分にはあまり身もふたもないような議論に感じ、あまり面白くなかった。ランダムな株価の動きは、ときにパターンが見えてしまうのは事実(p.184)。時系列分析で単位根検定が必要な理由。

チャート分析については特に目の敵にしたように冷たい態度(p.169f)。チャート分析は二点の根本的な困難があると言う(p.143, 200)。まず第一にトレンドが形成された後にしか投資しないので、常にタイミングを取り逃がす。第二に、みんなが同じシグナルに対して同じ行動をとれば、この手法は成立しないので自己矛盾となる。科学的な見地からはチャート分析は錬金術と大差ないもの。テクニカルアナリストがそれでも存在するのは、この分析は銘柄間の乗り換えを推奨するので、証券会社に手数料収入をもたらすからだろうという(p.196f)。過去のある期間をとって株価の推移を調べれば、必ずと言っていいほど有効な投資戦略が見つかってしまうものだ。だがそれは異なる期間でテストされていない(p.198f)。すなわち、過学習の結果だという。

ファンダメンタル分析にも難点が3つ(p.159f)。まず、分析の基となっている情報や別の分析が正しいとは限らない。二つ目に、アナリストは価値の推定を間違う可能性がある。三つ目に、市場が必ずしも自らの間違いを速やかに訂正するとは限らない。ファンダメンタリストである証券アナリストもしばしば予想を誤る。その理由は5つ(p.211)。ランダムに発生する事件の影響。企業の会計操作によるいかがわしい利益の捻出。多くのアナリストにみられるお粗末なエラー。セールス活動への協力と運用部門への人材流出。証券アナリスト業務と投資銀行業務との間の利益相反。

ということで株式投資で利益を上げるための方策は3つだという(p.466-495)。インデックス・ファンドを買うだけで放置すること、めぼしい銘柄を独力で見つけること、投資信託に任せること。投資信託のパフォーマンスは経費率と売買回転率で決まるという話(p.495)は参考になるだろう。著者自身は過去、EPSは堅実に推移するのに市場の評価が低くてPERか相対的に割安な株に投資せよ、と述べていた(p.330)。市場がその価値を気づかずに放置している株に投資せよと。ただ、これも結局はチャート分析のような自己撞着になるだろう。それが理由か、後の版の記述で推奨はやめている(p.497)。

結局、一晩で大金持ちになることを狙うような投機家にとってはこの本は役に立たない(p.22)そうなので、私には役に立たないのだろう。それ以前に、株価の動きはランダムウォークであるという命題と、インデックスファンドへの投資がベストという命題がどうつながるのか、500ページ読んでも不明だ。これが成立するには、短期的な価格変動や長期でも個々の株式の株価の動きはランダムウォークだが、長期的には市場の平均株価は上昇するので、インデックスファンドへの投資は利益を生むという推論だろう。これに対する批判は次の二点があるだろう。(1)長期的に平均株価が上昇するという命題はどこから来たのか。暗黙的にこれが仮定されているのは著者が見ているのがアメリカ市場だからだろう。(2)ランダムウォークだから放置するのがなぜ賢明なのか。まさにブラック=ショールズ方程式ってランダムウォークを理論に取り込んだものなのではないのか。そしてLTCMの失敗から見ることは、市場にはもしかしてランダムウォーク以上のことがあるということではないのか。
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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。
しかし博士号は取らずPh.D. Candidateで進路変更。
哲学と特に関係なくIT業界に住んでいる。

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