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ロビン・ウィルソン『四色問題』

四色問題四色問題
(2004/11/25)
ロビン・ウィルソン

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とても良い本だ。数学上の有名な未解決問題だった、四色問題の歴史について。四色問題は、地図上の国々を塗り分けるにはどんなに国があっても4色あれば足りる、というもの。数学の有名な未解決問題(だったもの)はいくつもあるが、とっつきやすいものとしては四色問題は抜群だろう。ポアンカレ予想はもとより、双子素数やフェルマーの最終予想の比ではない。

四色問題は実際はグラフ理論の定理なのだが、あくまで地図の塗り分けという点に絞って書かれているのがこの本の素晴らしいところ。しかも、きわめて分かりやすい。予想以上のスピードですらすら読めた。オイラーの定理の解説も素晴らしい。実際の四色問題の解決にあたって重要な役割を果たす、可約配置と不可避集合の解説もスマート。驚くべき読みやすさ。

ちなみに訳者の名前を見るとぎょっとするが、これは名前貸し。訳の質には問題ない。訳者解説が笑える。数学は、忙しい疲れたサラリーマンを浮世離れした問題で癒してくれるんだと。確かに、四色問題に悩まされる地図職人はいない。当たり前だ。だが、それは四色問題が「浮世離れしたプラトン的世界の出来事」だからか?おいおい。例えば巡回サラリーマン問題に悩まされる営業マンはいない。では巡回サラリーマン問題は浮世離れした問題か。そんなことは決してない。この問題がいかに実生活に関わっているかは、少し調べれば分かる。それは単に、サラリーマンが悩むような問題ではないだけだ。四色問題でも同様である。この本がグラフ論への示唆をきわめて最小限に抑えている(p.109,217)ことにも原因の一端はあるが、それにしても酷いコメントではないか。


amazonに読書記掲載。
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有名な数学の未解決問題だった、四色問題についての読み物。素晴らしい出来だ。とても面白い。四色問題は、地図上の国々を塗り分けるには、どんなに国があっても4色で足りるかどうか、というもの。問題自体の理解のしやすさは、他の有名な数学の未解決(だった)問題--ポアンカレ予想、フェルマーの最終予想、ゴールドバッハ予想、P=NP予想など--に比べて抜群だ。そしてそのような理解しやすい問題を、さらに理解しやすく解説したのが本書である。

四色問題の歴史についての従来の通説を排して、史実に基づいて提示している。問題に関わった個々の人のエピソードも面白い。失敗者も取り上げられる。こういった有名な問題は、ときに数学者以外からも様々なアプローチがなされる。しかし著者は、泡沫な意見は取り上げない。間違えた人も、その間違え方が重要だったからだ。この観点は大事である。

四色問題の解決に至る、重要な概念が順を追って導入される。オイラーの多面体公式から「どんな地図にも、5個以上の隣国しか持たない国が少なくとも一つある」という重要な定理へ。問題解決の主要なアプローチとなるケンプ鎖についても、例を挙げつつ詳説される。そして最終解決への鍵となる概念、可約性と不可避集合についてもそうだ。詳しく書くところと、さらっと流すエピソード。バランス感覚が素晴らしい。

四色問題の証明がコンピューターを広範に用いたことに対する騒動についても書かれている。だが、実際に専門家の中で四色問題の証明に対して挙げられた疑念は、この点に関してではないこともきちんと記されている。この点、読むには踏まえるべきである。

本書は四色問題だけを扱っている。つまり、それがグラフ論の問題であることは、わずかに示唆される(p.109,217)だけ。これは執筆上の方針だろう。これによって焦点が絞られた記述となっている。だが結果として、あたかも四色問題が独立した、「浮世離れした」問題に見えてしまうことも一面としてある。

最後に、訳者の名前を見て非常に不安な気持ちになる。しかしこれは「名前貸し」。本当の訳者は別の人であり、翻訳の質について問題はない。むしろ、かなりよくできた翻訳だ。この名目上の訳者が、四色問題それ自体にほとんど関心を持っていないことは、的はずれな訳者解説を見れば分かる。
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