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竹内繁樹『量子コンピュータ』


読者に何とか分かってもらおうという著者の思いが伝わってくる名著。量子コンピュータの面白さと分からなさを知るには、これが一番だと思う。きわめて平易な語り口をしていて、数式も控えめながら、書かれている内容はハード。量子力学の基本的な解説、確率波と重ね合わせから始まる。量子コンピュータのアルゴリズムとして、ドイチュ・ジョサ、グローバー、ショアのアルゴリズムを何とか逃げずに解説する。量子コンピュータを物理的に実現するための様々な試みを紹介。そして量子暗号について述べる。

ビームスプリッターや半透鏡の光子への作用を中心に解説される量子力学の基本原理。偏光ビームスプリッターを使った不確定性原理の解説(p.58-63)は秀逸。干渉計を例にした光子の状態の重ね合わせと位相の解説(p.69-72)も、分からないところはあれど、まったく手応えを失ってしまうという感じにはならない。量子ビットの重ね合わせは球体上の緯度経度を使って解説される(p.103f)。これはとてもよいと思う。

アルゴリズムの解説の山場はショアのアルゴリズム。通常とは違う因数分解のやり方から、量子フーリエ変換の話に帰着させている。核となるアイデアだけをうまく取り出してきている。量子ビットを実際に作り、デコヒーレンスを抑える仕組みは、著者自身の試みと合わせて扱われる。光子を使った場合が簡単ではあるが、制御ノットを作るのが難しいとのこと(p.188-195)。

量子コンピュータについて知りたいならまず読すべき信頼の置ける本。
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