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津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』


良書。何の食品が身体に良いかという情報は、ゴミみたいなものが世の中にあふれている。メディアをまきこんで、そうした情報は空虚なブームを巻き起こしたりしている。本書は科学的エビデンスという考え方を踏まえて、いまの科学的議論で何が確からしいものとして言えるかを明らかにしようとしている。

科学的エビデンスにはレベル、階層がある。最強なのは複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスだ。たいていの健康食品情報は、きわめて少ないサンプルで、しかも追試もされていないような情報ばかりである。健康への影響が少数の研究で示唆されているものは、本書に含まない(p.34-39)。と書かれているが、こんな研究もあるという形でエビデンスのレベルの低い研究への言及もある。

一つのポイントは、重要なのは成分でなく食品というところ(p.42-49)。成分が日常で話題になるのは日本特有の現象だという。メディアを通じて昔有名なったのは、βカロチンやリコピンなどがある。しかしβカロチンはガンのリスクを上げるというエビデンスがあるし、リコピンは体に良いというエビデンスはない。そもそも成分そのものを摂取することは通常はない。食品によって他の成分とともに摂取されるもの。成分のみを取り上げることにあまり意味はないという。

結論を書けば、科学的な研究から現在健康に良いと考えられているのは、魚、野菜と果物、茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類の5つである。逆に悪いのは赤い肉、白い炭水化物、バターなどの飽和脂肪酸の3つ(p.28)。

魚の摂取、特にオメガ3脂肪酸の摂取は心筋梗塞のリスクと一部のガンのリスクを下げるとのこと。一部のガンというのは、乳がん、大腸がん、肺がんのリスクは下がるが、胃がんや前立腺がんはリスクを下げない(p.90-96)。

野菜と果物は心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げるが、ガンには有意な関係はない(p.76-78)。野菜と果物については加工されていないことが大事。フルーツジュースは血糖値を上げるため、糖尿病のリスクを増やす。果物は血糖値の上昇を抑えてくれる食物繊維も含まれているので、フルーツジュースとは違う結果となるという(p.78-81)。ここにも成分のみ考えても意味がないという論点がある。

炭水化物で茶色と白色というのは、精白されているかどうか。米だと玄米と白米、小麦だと全粒粉と精白粉。特に白米(と精白粉)は、科学的に言って明らかに糖尿病のリスクを上昇させる。これは食べ過ぎなければいいという話ではなく、白米は少量でも体に悪い。白米の摂取量と糖尿病のリスクとの間には正の相関があるので、摂取量はできるだけ少ない方が良い。ただがんのリスクについては、白米と有意な関係はない(p.109-117)。

赤い肉というのは、ほぼ鶏肉以外のすべての肉類。特にハムやソーセージなどの加工肉は大腸がんや脳卒中のリスクを上げる体に悪い食品である(p.138)。

ちなみに日本食が身体に良いか、参考になる議論がある。日本の中では日本食は身体に良いようなイメージがあって、世界に売り出そうとしている。しかし、日本食が健康に良いというエビデンスは弱い(メタアナリシスがない)。イメージで語られている側面が大きい。健康に良いという強いエビデンスがあるのは、魚やオリーブオイルからなる地中海食である(p.62f)。日本食の問題点は炭水化物が多いことと、塩分摂取量が多すぎること(p.123)。白米の危険性は上述の通り。日本食の塩分量で一番問題なのは味噌汁と漬物。この二つをやめてみるべきだという(p.129f)。

著者が記すところ、正しい健康情報収集の仕方は、テレビなどのメディアの健康情報、健康本、日本語で書かれたインターネット情報の三つは信用しないことだという(p.165-171)。英語で研究機関のものを検索するのが一番だそうだ。一般の人にはハードルがかなり高いだろう。ここで研究機関であって、政府機関でないことは重要。日本でもアメリカでも、政府が推奨する食事は各団体のロビーイングによって歪められている可能性があり、必ずしも科学的根拠に基づくものではない(p.97-100)。例えば白米、味噌汁、漬物が身体に悪いから控えたほうがよいなんて情報は、日本政府が発表するはずがない。

本書に書かれていることはすべて正しいというわけではなく、科学的エビデンスの点からも問題がある箇所があるようだ。だが何より、こうしてきちんと科学的に議論しようとする態度は稀有で素晴らしい。
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