Entries

マイケル・トマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』

ヒトはなぜ協力するのか(2013/06/30)マイケル トマセロ商品詳細を見る著名な認知心理学者による講演。シンポジウムの記録らしく、著者の講演記録の後に異なる分野から4人のコメントが寄せられている。人間の幼児に対する実験や、霊長類に対する実験を対照させながら、人間が本性的に持つ、他人と協力する性向を明らかにしようとしている。論旨はかなり明快であるし、紹介される実験も興味深いものが多い。他人と協働することへの...

斎藤勇『人はなぜ足を引っ張り合うのか』

人はなぜ足を引っ張り合うのか―自分の幸福しか考えない人間がいる(2004/04)斎藤 勇商品詳細を見る社会心理学の立場から企業組織内の行動を見た一冊。1998年と少し古い本だが、こうしたものは早々変わらない。経済系の雑誌に連載されていた記事をまとめたもの。そのせいもあって、各章ともまとまりをもって平易に書かれている。とても面白い。主に企業組織内でビジネスパーソンにある、自分の利益しか考えていないような行動がなぜ...

松波謙一『運動と脳』

運動と脳―脳は体の動きを自在に操る (叢書・脳を考える)(1986/01)松波 謙一商品詳細を見る脳が身体を動かす仕組みについて。なるべく平易に書かれたようだが、専門用語が多くちょっと読みにくい。基本的なニューロンの知識から、反射を例に取った運動に関わる神経の動き、大脳皮質の構造をざっと眺める。その後は運動に関わる脳の各部位、つまり運動野、運動連合野、前頭前野、後頭連合野、小脳、大脳基底核といった部位の構造と運...

Daniel Kahneman, "Thinking, Fast and Slow"

Thinking, Fast and Slow(2011/11/03)Daniel Kahneman商品詳細を見る(All "loc." of quotation in this review refers to the location number of Amazon Kindle edition of this book without real page numbers.) An amazingly well-written book by the laureate of the Nobel Memorial Prize in Economic Sciences 2002. In this famous book, an Israeli-American psychologist explains his study in psychology and behavi...

内山登紀夫、水野薫、吉田友子編『高機能自閉症・アスペルガー症候群入門』

高機能自閉症・アスペルガー症候群入門―正しい理解と対応のために(2002/03)内山 登紀夫、 他商品詳細を見るアスペルガー症候群について。その特徴付け、診察および治療の現状、そのような子供の扱い方など。自閉症スペクトラムの考え方に立っているので、本書では高機能自閉症とアスペルガー症候群は同義に用いられている。狭義の自閉症(カナー型自閉症)からより高機能のものまでに自閉症は渡ると考えられている。自閉症スペクト...

加藤進昌編『看護のための最新医学講座 第12巻 精神疾患』

看護のための最新医学講座 (第12巻)(2002/02)日野原 重明、井村 裕夫 他商品詳細を見る看護系の学生が勉強しているのをよく見かける標準テキストシリーズから、精神疾患の巻。精神疾患の概要から医療機関、社会、家庭などの治療環境、CT/MRI/SPECTなどの検査の概要、そして個々の疾患について。個々の疾患で取り上げられるのは幼児期疾患、摂食障害、せん妄、身体疾患による障害、アルコール・薬物依存、精神分裂病(本書では統合...

オリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)(2009/07/05)オリヴァー サックス、Oliver Sacks 他商品詳細を見る有名な本。神経医オリバー・サックスがその治療の過程で出会った、脳に損傷を抱えた患者の奇妙な症例を記したもの。主に右脳の損傷による認知、運動制御、記憶などの機能障害や、異常知能たるidiot savantについて。短い症例記が24個ある。どれも面白く読めるが、もう少し科学的な深みが欲しい。著者のス...

ジェラルド・エーデルマン『脳は空より広いか』

脳は空より広いか―「私」という現象を考える(2006/12/01)ジェラルド M. エーデルマン、冬樹 純子 他商品詳細を見る神経科学者による意識論。結論から言えば、神経細胞群選択説(Theory of Neuronal Group Selection; TNGS)によってその成立が説明される、脳の視床-皮質系の双方向の結合(ダイナミック・コア; p.90)が意識の神経学的基盤であり、意識とはこのダイナミック・コアの活動の「特性」(p.165)であり、クオリアとは神経プ...

深井朋樹編『脳の計算論(シリーズ脳科学 1)』

脳の計算論(シリーズ脳科学 1)(2009/06/29)甘利 俊一、 他商品詳細を見る勢いで読み終えたが、分かるところは少なかった。本書は理論的神経科学の教科書となることを目して作られている。脳のニューロンが発火するメカニズム、多数のニューロンが連携して働くメカニズムをどのように理論化するかを巡っている。きちんと読解するには、微分方程式や確率論の知識が必要である。最も標準的な、神経細胞の細胞膜をコンデンサー、イオン...

エリオット・ヴァレンスタイン『精神疾患は脳の病気か?』

精神疾患は脳の病気か?―向精神薬の科学と虚構(2008/02/23)エリオット S.ヴァレンスタイン商品詳細を見る邦題に惑わされるなかれ。これは精神疾患が脳の病気であることを疑っている本ではない。訳者はそう解釈しているよう(p.319)だが、それは原著者の意向ではないのでは。著者は言う。精神の働きは脳の活動であって、誰もそれを疑ってはいないのである(p.292)。精神疾患は脳の病気<である>。これを疑うことは著者の主張ではない...