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井原西鶴『新版 日本永代蔵 現代語訳付き』

1688年刊の、いまで言う自己啓発本か。江戸、大坂、京を中心として財を成したり没落したりした商人の姿を描いたエッセイ集。原文もとてもリズミカルで読みやすい。話の筋は、序説と本説のバランスが悪かったり、思わぬ脱線があったりしてうねっている。それは「西鶴の作品では、近代的なリアリズムとは大分かけ離れた筋道をとることが多く、しばしば説話的な展開をとってゆく」(p.299)のであって、近代的なエッセイの構造を読み込...

宮本正興、松田素二編『新書アフリカ史』

新書だが600ページ近くある。主にサブサハラ(サハラ砂漠より南の地域)のアフリカの、先史時代から現代までを扱ったもの。10名以上の著者による、多面的な記述。アフリカについて考えるに際し、基礎的な知識と考察の軸を与えてくれる良書。アフリカの歴史の記述は困難を極める。通常のアフリカ史は人類が登場した約150万年前がまず書かれる。ところが、その次はヨーロッパ人がアフリカを探検して、植民地支配を始める19世紀末まで...

鈴木淳『関東大震災』

関東大震災について。特に震災発生後、罹災者たちがどう行動し、それを救援する行政、医療機関、地域の人々がどう行動したが綿密な資料渉猟によって描かれる。歴史研究者らしく細部の数字にまで気を抜かない姿勢が見える。それゆえ、よくあることだが、読み手としては細かい記述にポイントを見失いがちにもなる。ただ、著者が目しているのは単に歴史的事実の確定ではない。そこから来るべき震災に向けてどのような教訓を引き出して...

黒田俊雄『寺社勢力』

寺社勢力―もう一つの中世社会 (岩波新書 黄版 117)鎌倉時代を中心にして、いわゆる旧仏教勢力、顕密仏教を描いたもの。奈良時代・平安時代を経て寺社勢力が成立する過程、本寺・末寺や荘園支配といった支配体制、寺社内の位階秩序や意思決定の仕組み、僧の典型的なキャリア、政治勢力や鎌倉新仏教との関わり、地方寺社。そして室町末期から戦国時代にかけて寺社勢力が衰退していく様を描いている。「寺社」勢力なので神道も記述の...

鈴木淳『維新の構想と展開』

維新の構想と展開 日本の歴史20 (講談社学術文庫)五箇条の御誓文(1868年)から大日本帝国憲法発布(1889年)に至る明治政府の政策展開を追ったもの。細かな資料をたどりながら、五箇条の御誓文で記された方針が大日本帝国憲法に向かって展開されていく様を描く。廃藩置県に代表される行政機構の改革に始まり、戸長として各地方の末端行政を担った人たちの捉え方、士族への対処、造船業や紡績業に代表される殖産興業といったトピッ...

鈴木淳『新技術の社会誌』

日本の近代 15 新技術の社会誌科学技術を用いた製品が人々の日常に浸透してゆく様を追いながら、それが日常生活に及ぼした変化を見ていく。時代は明治維新と太平洋戦争後。これらの時代を扱うといきおい、政治史が主になってしまう。この本には政治の話は登場しない。しかしその時代時代を彩った新しい技術による製品と、それによって変わっていく生活の様は読んでいてとても面白い。扱われている製品は、明治期が洋式小銃、活版印...

塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界4』

ローマ亡き後の地中海世界4: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)地中海を巡るスペイン、フランス、ヴェネツィアといった大国とオスマン帝国のせめぎ合いが続く。この時代は海の現場においても、スペインの海軍提督アンドレア・ドーリアや、オスマン側のドラグー(赤ひげ)、ウルグ・アリなど魅力的な人物が描かれている。相変わらずスペインにはやや冷淡な記述が続く。ヴェネツィア、ローマ教皇、スペインが連合してオスマン帝国に挑んだ...

河島英昭『ローマ散策』

ローマ散策 (岩波新書)ローマという都市について。特にその構造と歴史についてエッセイの形で書かれている。ローマで暮らした著者自身の体験や、ローマに惹かれた明治期の日本人の話も絡められている。ローマを散策するにあたって、そもそもどういう構造でできている都市なのかを知るによい。ローマは7つの丘の上に築かれている。元老院宮殿があり、ローマの心臓部とも言えるミケランジェロの設計によるカンピドッリオの丘を中心と...

塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界3』

ローマ亡き後の地中海世界3: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)記述はスペイン、フランス、オスマン帝国という三つの大国がせめぎ合う時代へ入っていく。それまで各都市ごとの小さな集団を中心として動いていた海賊とそれへの対抗が、より大きな領土国家の枠組で動き始める。1494年のフランス王フランソワ1世のイタリア侵攻をもって、時代は都市国家から領土国家へ主軸が移る。個々人の生産性は低くとも人口の多い方が優位に立つ。大国...

塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界2』

ローマ亡き後の地中海世界2: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)10世紀から15世紀くらいまでを描いている。相も変わらずイタリアを襲い続ける海賊と、それに対抗し始めるイタリア諸国を追っていく。こうもサラセンの海賊の襲撃が続くイタリアでは、ローマ時代には「海に沿う町は「地の利を得ている」とされていたのだが、中世ではそれが「不利」に変わっていたのである」(p.22f)。シチリア島を支配したイスラム勢力は、そのすぐ対岸...
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